最低な幼馴染

3/8
前へ
/38ページ
次へ
私が近づくにつれて、周りの何人かが私の存在を視界に収める。 「正妻が来た」 「よかった、これで助かった」 小声で言っているつもりだろうけど、思いっきり聞こえる。 正妻ってなによ。 雅史の妻になった覚えなんて微塵もない。 私に気付かずまだ言い争っている二人の後ろに立ち、息を吸う。 「あのー、ココで言い争うのやめてくれません?」 あくまでも穏やかに、かつ少し威圧感を含ませて言う。 普通だったら、私みたいなただの幼馴染の分際の、地味な女にこんなことを言われたら、かえって騒動が大きくなるものだ。 だけど雅史の周りの問題に関しては何故か違う。 「か、笠原さん!ごめんなさいっ」 「香澄ちゃん…ごめーん」 こうやってなぜかあっさりと退いてくれるのだ。 お陰で周りからは『正妻』なんて呼ばれてしまう始末だ。 本当に最悪。 「いやー、助かったよ」 雅史が悪びれもなく私に笑いかける。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加