酷く美しく暴力的な世界の裏側には、

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※※※※※※※※※※※※※※※※ 〈12年前、九龍城のとある密室〉 ーーーピラ、 読み終わった書類を部屋に備わっていた竈へと投げ捨て、ぱちぱちとそれが音を立てて燃え始めるのを見て深く息を吐き出した俺は、部屋にひっそりと佇んでいた人物へと視線を向けた。 「どうだった?」 「別にどうも。……あのおっさんも大概だなと思ったくらいだ」 「まあ確かにねえww…で?クラウスはそれを知ってどうする気なの?」 最もな問いに沈黙を返すと、にっこりと模範のような笑顔が視界に映る。 青く澄んだ瞳が答えを待っていて、それに息苦しさを覚えた俺は黒くなっていく紙束に視線をやることでその瞳から逃げた。 「…別になんもしねえよ。ただアイツの眼が気になったってだけで、何かしようなんて思ってなかったしな」 「まったまたー。クラウスなんだかんだ言って面倒見良いじゃない。お兄ちゃんだったからか知らないけど、結構甘いところあるでしょ?ま、クラウスの場合は不器用すぎるから人に気づかれること自体ないけどねーww」 クスクスと笑うランが「どうせ君は口で何だかんだ言おうと、あの新入り君を気にかけると僕は思うけどww」と嘯く。 それに舌打ちを返しながらも否定は出来ない事実に胸中で歯噛みする。 ーーーユン・リーファン。 ランに情報提供を求めた者の名だ。 リーファン家の跡継ぎであるラオの後ろで作り笑いを浮かべるユンを初めて見たときに感じた危うさが妙に気がかりだった俺は、これまた初対面であっさりとスパイだと見抜いたランに情報を求めた。 『君も大概命知らずだよねぇ、僕がスパイだと見抜いているうえに利用しようなんて、消されても文句言えないよ?』 呆れた顔で何だかんだ言っていたランも、口とは裏腹にかなり細かい資料を持ってきてくれた。 「ユンねえ。ま、悪い子じゃないってのはわかるんだけど彼は素直過ぎる気がするね。結社でもあまり信用はされてないみたいだよ」 「…素直か、じゃあアイツの狙いは、」 「うん、十中八九、九龍ヘイアンの壊滅とリーファン家を殺すことだろうね」 だからさ、クラウス。 それを知った君に訊きたいんだけどね。 躊躇うことなく言い切ったランが楽しそうに笑い、俺を見た。 とろり、糖度の高い瞳に宿るのは純粋で穢れの知らない何処までも綺麗な殺意だった。 「君は、裏切者の彼を殺すの?」
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