第1章『囚われの姫君』

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  青白く日光を嫌う柔らかな肌。青黒く光を放つ彼女の髪。 白いワンピースからスッと伸びた腕は分厚い本を抱え、開いた活字に虚ろな視線を向けていた。 彼女は窓際から逃げるように、冷たい床に座っていた。 私は牢屋の鍵をジャラジャラと鳴らして彼女の部屋へ近づく。 音に気づいた彼女は、本を閉じて鉄格子から私を見つめる。 「ディナーの時間?」 消えてしまいそうに、儚く透き通る声で彼女は問いかけた。
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