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「!?」
割り箸が入っていた袋で遊ぶのが彼女の癖。
器用にいつもなにか作っては店に置いていく。
おれが店員ならけっこう、いや相当いやだ。
いまもなにか作っていた手を止めて、鳩豆顔をしてる。
「なんでなんで!」
「なんで?」
「なんで落ち込んでないと思った?」
「…こどもみたいだよ」
「こどもでいいよ!はい!Say!」
「なんとなくだよ」
ちぇっと言って彼女はまた白ワインを注文する。
「Youなに呑むのさ」と空いたグラスを指す。
『そういうぶっきら棒な気遣いがいつもどおりだから』
「もうさ…恋愛終わったからこの世界も終わった!
なんて思っていい年じゃあないのよ、あたしたちは」
「そうだね」
「二十…」
「なな」
「七にもなったら立派な大人なのよーわかる?」
わかる?なんて言いながら2cm程の鶴を寄越してくる、
人間ははたして大人なのだろうか?
「スモールワールド終了でーす」
彼女はきっとわざと聞こえないように、
白ワイン2杯を運んできた店員の声と重なるように言った。
会話は仕事のはなし、近所のノラ猫のはなし、
アイドル熱愛発覚のはなし、いろいろ話した。
100%彼女の持ち込み企画なのは、いつものこと。
持ち込んだと思えばいつの間にか違う話題なのも。
散々話して一服挟むのも、いつものこと。
「じゃあさ」
「なんだい、青年」
「おれと別れる時は落ち込む?」
「後ろ髪なくなるまで引っ張られたら落ち込む」
「ふーん、ふふっ」
「なにー?」
「いや、ふふっ」
彼女がスーツの裾をちょんっと1度引っ張る。
犯人に目を向けると悪ガキのように舌を出す。
女心というものはよくわからないが、おそらくは。
「スモールワールドに住民票うつしたいんですけど」
住民税バカ高いよーけけけっ、と笑いながら、
またスーツの裾をつまんでいる。
(The world is not) end.
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