第1章

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【メールが1件届いているよ♪】 無機質ながらも、自分なんかより元気の良い声が真っ暗な部屋の中でこだまする。だが今の自分にはそんなものを見る余裕なんてない。手元にあるものの、気分は奈落の底にあり、到底見る気なんて起きないし見たくもない。どうせロクなメールじゃないことぐらいわかる。 (よってたかって、あたしを叩きたいだけのくせに) はぁ、と大きくため息をついて、あたしは色々なものが乗った勉強机の上で突っ伏していた。ちらりと時計に目をやると、深夜1時。本来なら、もう寝ないといけない時間だ。 それなのに―― 【メールが1件届いているよ♪】 愉快なメロディーのはずが、暗く沈むあたしの心に重くのしかかる。 (またきたよ、メールが。ホントにどれだけ暇なんだか、あいつらも。あたしは暇じゃないっていうのに) どうにもならない、と判断したあたしは渋々ながらも携帯電話を血色のない手で触る。ポチポチとボタンから音が鳴ると同時に、これから見る内容がえげつないものだろうと、げんなりしていた。 (メールの受信ボックスっと……削除しなきゃ) 今日一日かけて届いた迷惑メールを、整理していていると見慣れぬ文面が目に入る。どうやら、学校のクラスメイトからではないらしい。内容はとてもシンプルで、かつ明確だ。 『あなたは 今 苦しい。 だから 助けます。明日 あなたは 救われます』 「はぁ~……なんだろ、このメール。変な文章だな」 対照的に、真っ白に光る画面を覗き見たはいいが、わけがわからない。誰がこんなことができたものか。半信半疑、どころか信じられない。 (きっと、現実味のないことばかり考えていたから、こんなメールが届くんだな。もう寝ないと、本気でおかしくなりそう……) そう考えたあたしは、沢山のぬいぐるみを重ねておいているベッドへと、重い腰を上げて寝転ぶ。すると、あっという間に部屋には小さな口から、呼吸音が一定間隔で規則正しく漏れていた。 【メールが1件届いているよ♪】 その声は、寝る間際に聞いた。
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