危険な罠

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近づかなければよかった 引き返せばよかったんだ 美しいあの人が 艶やかな笑みを僕に返してくれるたびに 僕の胸はどうしようもなく高鳴ってしまう あなたの瞳は怖いくらいに妖艶で たまらなく色香があって 瞳だけでこんなにも吸い込まれそうになるなんて だけど僕の心の中で本能が警鐘を鳴らす “近づいたら駄目だ” “あの女は危険だ” 今日もあの人は僕に優しく微笑む ある日僕は気付いてしまった あの人のまつげが濡れていることに 肩を震わせてひとり静かに泣いていたんだ 潤んだ瞳で僕に真っ直ぐに視線をくれる その瞳は深い海のように底が見えない あなたのことが知りたい あなたに触れてみたい 僕は近付いてしまった ****** 私を見て 私に触れて 私のそばにいて 今日もあの人が来ている ちらちらとこちらを窺うように ねぇ 私 あなたのことが好きになったみたい あなたの瞳は綺麗ね 悪いことなんかできないような澄んだ瞳 ねぇ 早くおいでよ ここはいいところよ 色とりどりのお花が咲いて 朝露を含んできらきらと宝石がこぼれるのよ あなたが私に近づく ああ やっぱり駄目 私は汚れているの あなたが思っているような女じゃないの 来ないで 私を見ないで きらきらと朝露がはじけて こぼれたのは私の涙
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