第1章

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あれから、メールを見ていないことを思い出した。 いつから、読んでなかっただろう。 友達も少ないから、メールは溜まっていないだろうけど。 そして携帯を開けると、電池は切れていた。 電源につなぐと、すぐさまメールが二通、自動で受信された。 そこには、「大丈夫?」「心配したよ」と、疎遠だった友達から短く添えられていた。 そのメールの前に、既読だが見慣れないメールが保護ロックされていた。 「未来のあなたへ」 このメールを未来の自分に託します。 今、このメールを読んでいるあなたは、少し混乱していることでしょう。 何しろ過去の自分からメールが届いていたのだから。 それはさておき、あなたもご存知だと思いますが、私は先ほど自殺を考えて行動に移しました。 でも、実現はしませんでした。 そして、その後の記憶が少し欠けているはずです。 それが今の私です。 何も心配はしないで下さい。 現に今、このメールを読んでいるのだから。 私は、昏睡状態でベッドに横たわっている自分を眺めながら、いろいろと考えました。 私達も馬鹿ですね、彼女に振られたくらいで祖父の睡眠薬を大量に飲むなんて。 でも、よいことが一つありました。 彼女が私の手を取り、泣いてくれました。 しかも、こう言って。 「あなたとずっと居たかった。でも、あなたの子供が産めない体なの。ごめんなさい」 そして頬にキスをして、部屋を出て行きました。 あなたの気持ちが、まだ変わっていないのなら、ぜひ、お願い致します。 追伸、霊体は便利ですね、手を使わずにメールが打てるのですから。
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