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―――――耳慣れない音楽と共に、肩に掛けた鞄の取り出しやすい位置に入れていた携帯がバイブ音を発した。
一瞬それが何なのか理解できずに歩んでいた足が止まれば、丁度良いことに渡ろうとしていた信号が赤に変わったので安心して息をつく。
のんびりと歩を進めながら携帯――――最近スマホに機種替えしたばかりで未だに操作が慣れない――――を取り出せば、メールのようである。
着信かと思って焦った私であるが、どうやら杞憂だったようだ。苦笑してロック認証を解除する。
私が携帯を変えたのはほんの一ヶ月ほど前のことだ。
最近の女子高生であればそれだけの期間があれば操作なんてお手の物なのかもしれないが、元々携帯を持ち歩く習慣も暇つぶしに操作する趣味も持っていない私である。
友人と携帯の中で会話をする機会があっても、言いたいことを打っている間に話が変わっていて、気がつけば返しているのは『うん』の二文字ばかり。完全に聞き専門だった。
初めて扱うこととなったこのスマホでさえ操作が解っておらず、設定の殆どは私にスマートフォンを持たせる事とした母がすることとなった。
何処に触れたか画面が勝手に変わってどうすれば良いのか解らずと惑いっぱなしの私に母は『自分で色々弄って操作を覚えろ』と言って下さったが、タッチ式の機械なんて扱うことがなかったのだ、壊れそうで怖い。
……まぁ、そう言えば『そう簡単に壊れない』と言われるのだろうが、それと本能的な恐怖は別である。
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