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当然片手で扱うなんてことが出来るはずもない私は、左手に持ったそれを右手でスライドさせながらメールの機能を慎重にタッチする。
ふと心配になって目の前の信号を確認すれば、渡りたい方と違う信号が青になったところだった。確認を終えて視線を元に戻すと、受信ボックスの欄を開く。
私と同じように信号待ちらしい、同じ高校の男子生徒が数歩離れて隣に立ち止まった。
ちらりと横目で確認すれば、彼はガラケーと呼ばれることとなった開く形式の携帯画面を訝しげに見つめていて、何処か呆れたようにため息を吐きながら信号を見上げる。
つい最近まで私も、絶滅危惧だとか揶揄されるガラパゴス携帯の使用者だったからだろうか、どことない親近感のようなものを感じつつ、登録した記憶もないアドレス――――文字化けしているのか文字の並びから読み取ることが出来ない――――から届いたメールを開いた。
画面が変わってメール内容が開いたその瞬間、隣に居た男子生徒が何を思ったのか――――信号が変わっていない道路に飛び出す。
何が起こったのだろう。対岸を見れば、信号を渡った先にある公園からボールを追いかけていたらしい男の子が道路に出ようとしていた。それを止めようとしたのだとは直ぐに理解できたが、それと同時に距離が有り過ぎることも判っていた。
――――――周囲に響くブレーキ音と、耳を切り裂くような悲鳴。
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