始まりにして終わり

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 ぐちゃり。  と、耳の奥で肉が潰れたような音が聞こえる。  声を出そうにも喉からは苦しい息しか吐出されることはなく、右目も真っ赤な景色を目視していた。  全身が重く指もピクリとしか動かせないながらも、辛うじて意思の通りに動かせる左目が状況を把握しようと周囲を見回す。  半分の空と地面しか見えない現状で見つけられたのは、携帯が不可思議に離れて転がっている様子だけだった。  左手はしっかりとスマホを握っているのに不思議で、霧のかかったような脳を働かせることで自分の状態を理解する。  とろん、と重い瞼が視界を塞ぎ、思考力が失われてゆく。  このまま眠ればもう目をさますことは無いのだということは気づいていた。  思い出すのは、交通事故にあった男子生徒の携帯と私に届いた同じメールの内容。  逃げきれなかったのだと、私は無理やり現状を納得させる。  頭のおかしい誰かが送ったとしか思えない、あんなメールの通りになるなんて、差出人の手のひらの上で転がされているようだった。 「――――――――…」  掠れた、精一杯の声で悪態をつく。  誰にも聞こえないその言葉は溶けこむように風に消え――――力尽きたように閉じられた瞼は、再び上がることはなかった。
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