2人が本棚に入れています
本棚に追加
「面白かったよ。お前の小説。それだけは、よく覚えてる。」
「え。」
「あれ、お前のだったんだろ、前に読んだあの、タイトル忘れたけど、表紙はよく覚えてるよ。花柄のすごく印象的な色だったから、良く覚えてる。」
「薔薇だよ。」
「そうだな。良く覚えてる。綺麗だったから。内容もちゃんと、だからそれだけはまじで覚えてるんだ。」
「そうなんだ。」
私はまた、この人の言葉に振り回される。この人の態度に振り回される。
それでもいいと、少しだけなら、それでもいいと、思ってしまう。思ってしまった。
「亮ちゃん。」
私はまた、この人の名前を呼んだ。
「何だよ。」
「私の名前、覚えてる?」
私は、可能性を信じた。少しでもいい、ちょっとでもいい、名前のひとかけらでも覚えていてほしいと、思ってしまった。
「ごめん。」
「やっぱり、外すの止めますね。」
「おい!待ってって…おい!」
どうやら夜は、これからのようですね。
最初のコメントを投稿しよう!