死亡なう

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死へのショックは、あまり無い。 生きていた頃の記憶はロクでもない。窮屈で、凡庸で、味気ないものだった。何より俺と親しい人間が一人も居ない。自覚が足りないのも手伝って、自分でも驚く位落ち着いている。むしろ、肩の荷がぐっと降りた気さえする。 妙な気分だ。 生前、俺は何処かで死にたがっていたのかもしれない。 色々考えてる内に眠くなってきた。まどろんでいた俺の意識は、徐々に遠ざかっていった。 光芒が瞼を射抜いた。 ビックリして目を開けると、女が俺の顔を覗き込んでいた。 呆然とする俺の身体を、女が抱きかかえる。 そしてまじまじ凝視してくる。誰だこいつ。目をぱちくりさせながら、何となく見返す。 爆音が響いた。 「リンダ!子供は?」 「生まれましたよ。元気な男の子です」 「そうか。よくやった」 大破したドアを踏みしめ、フードを目深に被ったローブ男が近づいてくる。俺の顔を覗き込んで、眉をひそめた。 「泣かないな」 「ええ。その代わり、この子の目はとても澄んでいます」 「……俺らには相応しくない目だ」 複雑そうに表情を変えて、男は言う。 「それより、名前は決まりましたか?」 「ああ、今思いついた。ヴァン。お前の名はヴァンだ」 俺を高々と持ち上げて、男は告げた。どうやら俺はヴァンに改名されたらしい。 ……ん? そこで漸く会話の違和感に気づき、続いて身体の違和感に気づく。 首を垂れて自身を見下ろすと、ミニマムサイズのムニムニした裸体があった。誰がどう見ても赤子の体。 は? 混乱する頭を必死で整理しつつ、男女の顔を見比べる。 ……えっと。 俺は今産まれたわけだから……赤ん坊として、新たに生まれ変わった?
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