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心臓の奥が疼いた。体外へと噴出する力の流れを、掌に集める。
すると、力が抜けていく感覚と共に、水晶が輝いた。
やがて徐々に光が収まる。母親は何とも言えない顔で、測定値を手帳に記した。反応からして、微妙な結果になったらしい。
気を持ち直して、もう一方の水晶にも手をかざした。
前と同じ要領で魔力を流し込むと、白金色に輝いた。
?……何だこの色。
初めて見る反応に、首を傾げる。
「……創造属性」
母親が驚嘆の声を上げる。創造って、神話やおとぎ話に出てくるあの魔法?
つっても、余り知らない魔法だから驚きようがないっていう。
測定終了。手を引っ込めて、母の言葉を待つ。
「魔力量、並。創造属性。前例を見ないデータだわ」
「帰っていい?」
「ええ、いいわよ。それと、誕生日おめでとう。はい。プレゼント」
「……ぉう?」
若干キョドりつつ、手渡された円筒の箱を受け取る。
プレゼントなんて貰ったの初めてだな。前世含めて。
なんかムズムズする。
この感情も、初めてだ。
不思議と嫌な気はしない。
退室した俺は、通い慣れたルートを辿って、地下へ降りた。
観音開きの扉を押し開く。
どことなく品を感じさせる、きしみ音。左右から視界が開けていく。
そこは地下図書室。
奥行きまった大部屋に、書棚がずらりと列をなす。後尾は遥か遠く、もはや見えない。
俺は迷わず右手の列に沿って歩み、お目当ての棚の前で立ち止まる。整然と隙なく埋め尽くされた、背表紙の中から、二冊同時に本を抜き取る。
更に図書室内を巡回し、資料文献を見繕えた所で、その場に腰を下ろす。
創造魔法なんて夢物語、そう情報が集まるとも思えなかったが、そんなことはなかった。
それから数日間、図書室に入り浸っては、本を読み漁り、また組の情報網を駆使して、創造属性への認識を深めていった。
……因みに、プレゼントの中身は対人用の肉斬り包丁だった。
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