第1章

2/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
ちょうど3年前、この場所だ。 午前2時。 暗く細い、忘れ去られたような道路に、昭和に作られたような古く薄暗い街灯が、道端に置かれた花を寂しく照らしている。 今日は命日だから、アイツの関係者が置いたのか? あれはまったくの偶然だった。 そう、偶然が重なった不運な出来事だったんだ。 こんな誰もいない、滅多に人のいない寂れた道路で、この街灯の下に、アイツは立っていた。 街灯の灯りに照らされて、アイツは無遠慮にこちらを見ていた。 「おいコラ、何見てんだ!」 俺は頭にきてそう言ってやった。 「は?見てねーよ。どこ見ようが俺の勝手だろ」 アイツは生意気にも言い返してきやがった。 「ああ!?舐めてんのかテメー!」 喧嘩を売るような事を言われたら、誰だってムカつくのは当然だろう? しかしアイツは謝るどころか、大股に歩み寄り、グイっと顔を近づけてこう言った。 「舐めてねーよ。見てんだよ」 俺はキレて殴ってやった。 アイツはその勢いで倒れ、後頭部をアスファルトにぶつけて死んだ。 地面に広がる赤黒い液体を見て、これはヤバいと思った。 周りは誰もいない。 誰も見ていない。 俺は急いでその場を立ち去った。 それから三年、事件は迷宮入りで、警察が俺の所へ来る事はなかった。 こんな所に立っていなければ、生意気な事を言わなければ、すぐに謝れば、こんな事にはならなかったのに。 花を蹴飛ばしてやろうかと思ったが、さすがに思い止まった。 「くそっ。あの時、俺の事を見ていなけりゃ…」 ピリリッ! 突然鳴ったメール音にビクッと肩を揺らす。 「なんだよ…」 周りの静けさで、余計に大きく神経に響いた。 ケータイを見ると、何故かアドレスが表示されていない。 メールを開くと、こう書いてあった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!