小説

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「付き合ってください」 大学2年の夏、大輔から告白された明美は、間抜けに口を開いたまま静止した。だって彼氏どころか、友達も一人もいない明美。大輔ともまともに喋ったことはなかった。 「ごめんなさい」 当然断る。しかし、「友達からでいいから」と言われ断りきれず、次第に大輔といる時間が増えた。 しかし明美は、大輔と恋人同士にはなれない。なぜなら、明美の心には4年前に交通事故で他界した元彼、大和がいたから。 その頃から、明美の周りで奇妙なことが起こり始める。屋上から落下した植木鉢。母と離婚後、男手一つで育ててくれた父の勤め先での事故。そして大和の字で書かれた奇妙な手紙・・・。 大和が怒っているんだ・・・。 そしてそれは、ついに大輔の命を奪った。大学構内の階段から転落し、亡くなったのだ。 暗い部屋。一人布団にくるまる明美。友達はいない。大輔もいない。父もあれ以来ICUに入ったまま。相談できる人も、助けてくれる人もいない・・・。 ヒタ・・・ヒタ・・・ 何かが近づいてくる。明美は、布団の端を強く握った。
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