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「はぁ………」
少し開いたカーテンの隙間から覗く日の光が部屋に入り込んだ頃、俺―――後鳥羽 零於は重い瞼を薄らと開く。
目線を自室の時計へ移した途端、大きく見開いた。
「学校………!………はぁ」
そう言って急いで布団から出たのはいいが、めんどくさくなってしまった俺。
確かに今日から新しく高校生活が始まるが、期待してもなかった。
「どうせ楽しくねぇだろ。………彼奴ら居ないし」
学校に行きたくない理由はもう一つあった。
俺は小さい時から喧嘩が強く、幼稚園児の時には餓鬼大将とも言われていた。
そんな餓鬼大将の俺には友達が居らず、友達が沢山いる子を殴ったり叩いたりしていたのだ。
そんな時、ある双子の兄弟と友達になった。
藤堂 春斗と琉夏。
その双子は俺を怖がらず、いつも俺の傍に居てくれたのだ。
だけど、小学校を卒業して藤堂兄弟は引っ越してしまったのだ。
それからまた、俺に友達が誰一人出来ず、再び不良となってしまった。
「………連絡ぐらいしろよな」
愚痴を言い乍、俺は制服を手に取り着替え始める。
「うわ、凄い。見てよ、琉夏」
「何だよ。お前さ、サボってないで仕事しろよ」
「いいから見てよ、此れ」
生徒会室の椅子をクルクル回し乍椅子に座っていた藤堂 琉夏に資料を渡す兄の春斗。
「………は?」
春斗が見ていた資料は新しく入ってきた1年生の入部届や、プロフィールだった。
「れ~ちゃんだよね。可愛くなってるかな」
「入学式の時居たか?」
「気付かなかったって事は居なかったんだよ。普通居たら気付くでしょ」
「まぁな。で、嬉しそうな顔してんな」
「勿論だよ~。琉夏だって嬉しそうだよ?」
「うるせぇな」
嬉しそうに資料を読んでいる琉夏を見て、春斗はグラウンドに目線を逸らした。
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