第1章

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「何、書いてんの?」 「これで、好きになって くんないかなーって。」 俺はスマートホンの画面から 目を離さずに質問に答えた。 「ふーん。」 答えに満足しなかったのか、 素っ気ない反応に俺は 隣を見いやる。 「何だよ。お前こそ、 何、書いてんだよ。」 「あんたと一緒。 このメールで、あたしに 振り向いてくれないかなーって。」 それを聞いた俺たちは ほぼ同時に大きなため息をついた。 俺たちは小さい頃から いつも一緒で、お互いの親も 仲が良い。 家も隣同士だったこともあり、 家族ぐるみの付き合いが 続いている。 通う学校は別々だったが、 就職してから 通勤時間が被るせいか それぞれの降りる駅まで 一緒に電車に乗って行く。 いわゆる、 『幼なじみ』ってやつだ。 そんな俺たちだったが、 最近は同じ悩みで 休みの日も頻繁に会い、 相談をし合うようになった。 「そっかぁ…、 お互い上手く行かねぇなー。」 「あんたと一緒にしないでよ。 あたしはもう少しで 何とかなりそうなんだから。 …それより、…大丈夫なの?」 「…んっ?…まぁ…な。 そういう、お前の方は?」 「正直、進展なし。 ヤバいことになったら嫌だなぁ…。」 そう答えた後、 アタシたちはまた、 大きなため息をついた。 ずっと一緒にいるせいか、 それぞれの好きな人は どことなく、お互いに似ていた。 幼なじみの二人が お互いの恋の応援。 これがドラマなら それなりに面白いのだが、 現実のアタシたちの恋は 上手くいってない。 「頑張って、映画ぐらい 行ってこいよ。」 「自分だって、デートの一つでも してくれば良いのに。」 「そう簡単に行かないんだよ。 あっちの問題も片付かないし。」 「それはそうだけど…。 もし付き合えたら、 一気に解決するのかなあ…。」 「かもなぁ…。…ヤっちゃう?」 「ハァ?何を?」 「何をっ…て、勝負メールだよ。」 唐突な質問に、 顔を見合わせ時間が止まる。 しばしの沈黙の後… 「…やってみっか。」 「えっ!?ホントに?」 「お前もヤろうぜ。 ずっとこのままって訳にも 行かねぇからな。」 「…んー、…分かった! じゃあ、同時に送信しよーよ!」 「マジで!? まぁ、でも面白そうだな。」 そう言うと二人共、 無言で画面に集中する。
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