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俺たちが帰ってきた数分後にトーマも学校から帰ってきた。
帰ってきたことに気づきトーマに近づこうとして俺は固まった。
トーマの顔は今まで見たことがなくらい暗く、寂しげだったからだ。
俺の視線に気づきいつもの笑顔に少しだけ戻ったけど隠せてはいなかった。
「・・・・ああ、ただいま。いまちょっと考えごとしててさ・・・・ビックリした?」
「ああ・・・・うん。・・・なんつーか、トーマらしくない顔っていうか。」
何て言ったらいいのかわかんなくて俺は困ってしまう。
何か悩みでもあるのだろうか。でもトーマはあまり自分のことを喋りたがらない。 ーーーーナズナ以外には。
この雰囲気からとにかく脱したい一心で俺は逃げるようにして自分の部屋に戻った。
トーマの視線がこっちに向いてるような気がしたけど、あえて俺は、見なかった。
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それからのトーマはどこか様子がおかしかった。話しかけても空元気で、笑顔をあまり見せない。
学校ではナズナといなくても、施設に帰ればナズナの側からあまり離れなかったのに、いまは前より一緒にいない。
あまりにも心配でトーマに何かあったのかと思い切って聞いては見たけど、「大丈夫だよ」としか返ってこなかった。
ナズナはというと、あまり部屋から出てこなくなった。
学校には行くものの教室にいることも少なからず減っていたし、放課後になると掃除が終わればすぐ帰ってしまう。
ナズナにも思い切ってどうしたのかと聞いたらいいのだろうか。でもきっとトーマと同じく終わるんだろうな。
二人は似てる部分が多いからわかってしまうんだ。
俺がどんなに心配して二人に気を配ったとしても、二人は逆に俺に気を使って話したがらない。
幼い俺のままだったらきっと意味もなく怒って八つ当たりしただろう。でもいまの俺は違う。
だてに長い間二人のことを見ていたわけじゃないし、理解してる。
でもつい最近まで一緒にいたから一人の時間は久しぶりだった。
「・・・・・さて、どうしたもんかな。」
いまの状況は喧嘩をしてるわけじゃないし、俺は二人と避けあってるわけじゃない。
ならいっそ喧嘩してしまえばお互いにいいんじゃないかって考えてはいる。
でも下手に動けば変にこじれてしまうような気もするし、打つ手があまりない困った状態。
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