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「 なんだよ、それ・・・・」
申し訳なさと、罪悪感で更に顔を上げられなくなっている私を見ながら嘆くハヤテ。
ずっと黙って聞いていた斗真が急に席を立つ。
「 ・・・・とにかく、ナズナはここに居て。看護師さん呼んでくるから。ハヤテも一緒に呼びに行こう。
ここに居ても俺たちにはナズナの力になる事は難しいでしょう?」
斗真の一言に颯の目が見開かれる。そして唇をぎりっと噛み締めて、口を開く。
「っ、 斗真、お前なんでそんなに落ち着いてられるんだよ? 俺たちの事もナズナ自身の事も、コイツはなにもわからないって
言ってるんだぞ?・・・・・俺はそんな風に、割り切れるやつじゃないんだよ・・・!!」
ガタッと椅子から立ち上がって彼は部屋から飛び出してしまった。
私が覚えていたら彼らのこんな悲しい顔を見ずにすんだのだろうか、悲しい顔をさせずにすんだのだろうか。
きっと私が目を覚ますまでここにずっと側に居てくれた優しい斗真。
私を心配してきっと病室に急いで来てくれた優しい颯。 優しい人たちが周りにいるのに、私はこの優しい人たちを
傷つける事しかできないなんて ーーーーーーーーー ーーーー 残酷だ。
暖かい懐かしさを感じる、それだけだけど、その気持ちになるのは紛れもなく彼らの側にいた私自身の“ 心の記憶 ”
ほんとに赤の他人にならこんな気持ちすら浮かばないはず。
考え込む私をみて ぽん、とトーマが優しく頭に手を置いてくれる。
まるで大丈夫だよ、と手から私に伝わってくるみたいいに安心できる大きな手。
(・・・私、この手を知っている、気がする・・・・)
「 ナズナ、顔をあげて。少しでいいから。」
「 ーーーーーーー! 、」
思わず体を強張らせる私を見て、トーマが少し笑う。
「 大丈夫だよ。君を傷つけたり、怖がらせるために話しかけてるんじゃないよ。だからそんなに緊張しないでよく聞いて。
君は三日前、7月25日に学校からの帰宅途中のバスに乗っていて事故にあったんだ。 原因は相手側の車が信号無視をして
バスに突っ込んできた。そしてバスがその衝撃で近くにあった川に転落した。」
「!!! 事故に、あった・・・?」
驚きのあまり更に固まってしまう。
もちろんそんな記憶私自身にはないものの、なにも覚えてない原因としてはなんだか頷ける気がする。
斗真は苦しい顔をしながら、話を続ける。
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