第1章

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「はああ? なに、だれ……こんな時間にー…」 真っ暗闇に塗り潰されていた室内には、明々とスマートフォンの画面が浮かび上がっている。 『未読メッセージ1件』 「あなたは6番目の商品に選ばれましたァ…?」 深夜に突然届いたメールには、如何にも不審めいた文面が整然と並んでいた。 ヒトの貴重な睡眠を妨げやがって、などと半ギレながら目を走らせる文面からはやはり胡散臭さしか感じない。 ───は? こんな深夜にふざけんな。 どうせ質の悪い悪戯だ。 しかし本当に単なる悪戯なのかと思いかけて、私は下がり気味な左目蓋を擦る。 そもそもメールを交わすような友人はいないので、悪戯の線はないだろう。 だとしたら出会い系か? いやいや、その可能性もない。SNSはもちろんFacebookとやらにも手をつけていないからだ。 だとしたらきっと、送り先を間違えたのだろう。 「悪戯だよね。変に怖がるなんて馬鹿らし…」 よし、消そう。取っておいても、きっと碌なことはない。 しかし、間違いと暫定してメールを消去しようとした瞬間、狂ったようにスマートフォンが異音を発して激しく振動を始めた。 “ビ───ッ、ビ───ッ、ヴヴゥウゥゥゥッ…ガガガガガガッ!!” 「うわっ、ちょ、ちょ、ちょ、ヤバイよ、なに…なにこれえぇっ!?」 まるでメールを消されることを拒むかのように、スマートフォンは振動をやめない。 なんだ、なんなのだ。 まさかGPSで追跡でもされてるのだろうか? それならそれで別の意味で怖いが、このどうしようもない状況が一番恐い。 ワケが解らない怪異現象に少なからず気圧された私はやむを得ず電源ボタンを連打する。 止まれ、 止まれ、 止まれ、 止まれ、 消さないから止まれ、お願い、止まって!! 『ヤクソクだ。破るなよ』 「は…?」 振動と異音に支配されていたはずの耳に滑り込んできた声にふい金縛りがとけた私は、雪崩れ込むようにベッドに倒れた。 ……はずだった。 「痛あっ!」 まるで地球がひっくり返るようなイメージで視界が攪拌されて、気がつけば見知らぬ冷たい草むらへ叩きつけられていた。
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