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「あ、い…たたたた…」
落下の衝撃も未だ醒めやらないないというのに、身を切るような寒風は身体が痺れるほど冷たい。
(もしかしたら、どこか折れたかも知れないな…)
じくじく痛みを訴える腕を庇いながら骨折の可能性を思うと、自然に目頭が熱を持った。
記憶が確かなら、自分は部屋のベッドにいたはずで、メールを削除しようとしただけである。
ただそれだけなのに、何故こんな目に?
ほんとに、本当に―――…
「ワケ解んない。どこよ…ここ…」
どういう理由なのかまったく解らないが兎に角も痛みに呻きながら周囲に視線を彷徨わせた私は、再び身体を固くする羽目になった。
何処かなんて疑問は、もう問題ですらない。
正答は座り込む自分を囲む異形の群が教えていた。
『さあ、さあ篤とご覧あれ。世にも珍しい丙午の娘っ子だ。』
仮面を被ったスーツ姿のウサギがステッキを振り上げて声高に叫ぶと、あらゆる動物擬きが円陣に集まりだす。それらはウサギだったり、ネズミだったり、獅子だったりした。
「ま、まさか…これ…」
彼らの、どれもが口々に競りの金額であろう言語を叫んでいるではないか。
これと似たような光景をつい3日前にTVのニュースで見たことを思い出して、痛む腕を庇いながら後ずさる。
商品に選ばれたというのは、おそらくこの異形たちが主催の『オークション』の獲物のことだったのだろう。
ヒノエンマが何なのか解らないが、自身が危険に晒されているのは理解できた。
……だめだ、このままではダメだ。
「に、げなきゃ…っ」
売られるか喰い殺されるか、どちらにせよ今ここで行動しなければどうなるかは解らない。
……逃げなきゃ、確実に死ぬ。それなのに、足が、身体が竦んで動かない…っ。
(お願い動いて…っ。せめて、立ち上がるくらいはしないと…)
しかし、立ち上がろうとした一瞬だった。
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