第一話 ギャンブル兎

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「やるよ」と蛇沼に声をかけられて、思考を中断させた。ひとまず勝負に集中しなければ。熊田のぶっとい指の動きに注目する。 熊田が親指で百円玉をピンと弾き上げた。くるくると回転した百円玉は熊田の手の甲に着地。着地と同時に熊田はさっともう片方の手で隠した。 「は……?」 なんだこれは。呆れるくらいに丸見えだった。裏だ。100と数字が見えた。 (運が向いてきた……?) 興奮して心臓が跳ねた。急いで答える。 「う――…」 遮って蛇沼が言った。 「ダメだねー。丸見えだったね。裏でしょ?」 「え!? ……ああ、そうですね」 蛇沼にも見えていたのか。がっくりと肩を落とした俺に蛇沼が言った。 「熊田くんが下手すぎるなあ……。仕方がない。僕と宇佐美くんは熊田くんがコイントスする前に賭けようか? それなら熊田くんが下手でも関係ない」 賭けるのが先か後かだけの違いか。100%運にはなってしまうが、2分の一の確率で借金を精算できる。 「……わかりました。それでやりましょう」 ……勝負がしたい。スリルで脳内でアドレナリンがブワッと放出された。裏か表か。二択。狐塚がボソッと言った。 「お前、今自分がどんな顔をしてるかわかってるか? そうやって……ギャンブルにハマっていったんだろうな」 自分の顔を押さえる。ここ最近ロクな飯を食べてないせいか肌はカサカサだった。さっきの天津飯は一昨日ぶりの飯だ。 「……関係なくないですか」 呆れたように狐塚は「だな」と言ってまた黙った。バカだと思っているんだろうな。ギャンブルに狂った人間のことを。 ――…パチンコ屋の騒音と煌びやかな音楽、賑やかな雰囲気に惹かれた。客同士の独特の一体感。 パチンコ屋で仲良くなった年上の奴に闇スロを教えてもらった。サラ金まで親切に紹介してくれたあいつは……
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