第1章

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メール。 それは、コンピュータネットワークを使用して、郵便のように情報等を交換する手段。 Wikipediaによるとそういうことらしいが。 まあそれは今どうでもいい。 スマホを握りしめた僕の手が引くほど震えていることに比べれば些末なことじゃないだろうか。 ね? ん? ね? 肝心なことは画面に表示されたメールの内容だ。 ピロリン(いい音)というような軽快な音を奏でながら送られてきたメールを開いた時、僕の頭は、警戒するように、という命令を体全体に送ったらしい。 さっきから手どころか頭のてっぺんから足のつま先まで震えが止まらない。 怖い。 僕の頭に浮かぶのはそんな言葉だけだった。 「……姉ちゃん」 僕は呟く。 メールを見ながら。 そして、先日、熊を素手で捕獲するというお前人間じゃねぇとしか言いようのない行いをいとも簡単にこなしてみせた甘党の姉を思い浮かべて。 僕の姉は自分の物を奪われた時、引くほどキレる。 それには家族である僕もドン引く。 背中に流れる汗を感じながら、僕はメールを見る。 メールには、短い文面でこう記されていた。 『冷蔵庫にめっちゃ美味そうなプリン入ってると思うんだけど、それあたしんだから勝手に食うなよ(^ω^)』 僕は震える。 かつて冷蔵庫に入っていた、めっちゃ美味かったプリンを見つめながら……。 「ただいまー!さーて、プリンプリン~!」 その時、僕の人生の終了を告げる声が聞こえた。 振り返ってみれば、僕の人生は幸せだったんじゃないかな。 ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の生活を送り、ごく普通とはとても言い難い最期を迎えて
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