第4話 世界

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国道七号線沿いにそれは見えてきた。 古ぼけたコンクリートの建物。 村上市市民プールは、中学校と総合体育館に並んで建っていた。 駐車場に車を停め、玄関へ向かう。 入り口のガラス窓には、『東北・甲信越 寒中水泳競技会 予選』とかしこまった字の張り紙があった。 まさかこれが動物残酷ショーだなんて、誰も思いやしない。 受け付けは、事務室前に置かれた長机で行われていた。 応対しているのはたったひとり。 簡素なもんだ。 梅田さんは受付でなにやら記入して戻ってきた。 「一応、参加ラバナスの名前を書かなきゃいけなかったんだけど」 名前? こいつにそんなものはない。 ヤツとかサルモドキとしか呼んでいない。 「なんでもいいですよ」 「だと思って、『ジュビリー二号』にしといた」 このオッサンは、本当に執念深いというか・・・。
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