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『東北・甲信越 寒中水泳競技会 予選』は、開会式も開催の挨拶も無しに、いつのまにかヌルっと始まった。
長さ二十五メートル、幅二十メートル、水深一・四メートルのプールが、試合会場だった。
ただし、水は一滴も張っていない。
この四角いコンクリートの壕が、ヤツらの土俵であり、リングなのだ。
入水用のスロープを、台車に乗せたケージが下りていく。
ケージにはアルミシート。
それは、ラバナスを見せないためのものではなく、外界の刺激に中のラバナスを興奮させないための配慮らしい。
プール槽に二つのケージが運び込まれる。
一方は、西側のスタート台近くに、もう一方は東側のスタート台近くに置かれた。
プールの端と端、向かい合わせるように置かれた二つのケージ。
それぞれのスタート台の上にいる係員が準備完了を確認し、持っていた旗を振り上げる。
二本の旗があがった次の瞬間、二人の係員が同時に旗を振り下ろした。
「アンリーシュ!」
その掛け声に合わせて、それぞれのケージのドアが開かれた。
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