第5話 許可

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「アンリーシュって、何なの? そういえば、万代島で梅田さんも言ってたよね?」 オレは、隣で目を皿にしている梅田さんに尋ねる。 オッサンは、面倒く臭そうにだけど、ちゃんと答えてくれた。 「『アンリーシュ』っていうのは、『Unleashed from cage.』の略だ。檻から解き放てって意味だよ。試合開始の号令みたいなもんさ。ほら、くるぞ」 西側のケージから出てきたのは、イヌの化け物だった。 全高七十センチほど、ドーベルマンみたいに黒光りした毛艶。 ただし、顔はサル。 一方、東側のケージから現れたのは、六十センチくらいの仔ウシ。 独特の、白黒ブチ模様。 だが、このウシは、四つ足が異様に短い。 その短さはダックスフンドなみ。 腹を地面にこすらせるような、よちよち歩き。 二頭はそれぞれのケージの周りで、ウロウロ落ち着かない様子だ。 ブリーダーたちから「アンリーシュ!」と声がかけられる。 観客の中からも「アンリーシュ!」と聞こえてくる。 すると、どうだろう。 フラフラとさまよっていた二頭の視線がからみあう。 イヌとウシ、お互いの存在を確認したとたん、それぞれが猛烈な勢いで走り出した。
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