769人が本棚に入れています
本棚に追加
「そろそろ僕たちも行こうか」
梅田さんが嬉しそうに立ち上がる。
なんてこった。
いよいよ、動物残酷ショーの渦中に、オレも身を投じるわけだ。
さっきから胃がムカムカして、気分が悪い。
「ほら、あれが対戦相手だ」
目の前を台車に乗った大きなケージが通る。
一メートル四方はあるだろう。
アルミシートで中はうかがい知ることができない。
お揃いの黒のパーカーを着た四人が、こっちを一瞥して通り過ぎる。
気合十分って感じだ。
こっちは明らかに気合不十分。
トートバッグが、朝より重く感じる。
ジッパーを開けて、サルモドキのガムテープを外してやる。
暗く狭い袋の中で退屈だったのか、ヤツは手を伸ばしてオレに抱き付こうとする。
こんな小さいサルが、本気でラバナスを育てている連中に敵うわけがなない。
「まだ袋から出しちゃ駄目だよ。他のラバナスを見て興奮するといけないから」
へいへい。
バッグに押し戻してジッパーを閉める。
最初のコメントを投稿しよう!