第5話 許可

6/16
前へ
/325ページ
次へ
「そろそろ僕たちも行こうか」 梅田さんが嬉しそうに立ち上がる。 なんてこった。 いよいよ、動物残酷ショーの渦中に、オレも身を投じるわけだ。 さっきから胃がムカムカして、気分が悪い。 「ほら、あれが対戦相手だ」 目の前を台車に乗った大きなケージが通る。 一メートル四方はあるだろう。 アルミシートで中はうかがい知ることができない。 お揃いの黒のパーカーを着た四人が、こっちを一瞥して通り過ぎる。 気合十分って感じだ。 こっちは明らかに気合不十分。 トートバッグが、朝より重く感じる。 ジッパーを開けて、サルモドキのガムテープを外してやる。 暗く狭い袋の中で退屈だったのか、ヤツは手を伸ばしてオレに抱き付こうとする。 こんな小さいサルが、本気でラバナスを育てている連中に敵うわけがなない。 「まだ袋から出しちゃ駄目だよ。他のラバナスを見て興奮するといけないから」 へいへい。 バッグに押し戻してジッパーを閉める。
/325ページ

最初のコメントを投稿しよう!

769人が本棚に入れています
本棚に追加