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「準備は・・・いいですか?」
係員が心配そうに聞いてくる。
梅田さんがオレに視線を向ける。
まったく、もう。
「いつでも、どうぞ」
オレの返答を聞いて、係員が旗を挙げた。
向かいの係員も旗で天井を指す。
二人がトランシーバーで交信して、息を合わせて同時に旗を振り下ろした。
「アンリーシュ!」
試合開始の合図だ。
相手側のケージが、勢いよく開かれる。
オレは、トートバッグの中からヤツの首根っこをつかんで、放り投げた。
ペタンという音とともに、地面に尻餅をついて着地する。
周囲をキョロキョロと見回し、四つん這いでオレの足に駆け寄ると、甘えん坊のように抱き付いた。
戦闘意欲、ゼロって感じ。
「こら、こっちじゃない。相手は向こうだ! 向こうへ行け!」
梅田さんが懸命に西側を指差しているが、ヤツは聞こうともしない。
会場のあちこちで、笑い声が漏れた。
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