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Q.世界で一番嫌いな人物をあげよ。
そんな問いがあったなら、オレは間違いなくあいつの名前をあげる。
稲葉信太郎。
ああ、名前を言うだけでムカムカする。
世の中には腹の立つ輩がたくさんいる。
自分の失敗をバイトのオレに押しつける副店長や、バーコードを通すたびに舌打ちする近所のコンビニ店員も然り。
でも、あいつに比べたら可愛いもんだ。
むなクソの悪さは、段違いのケタ違い。
あいつへの憎しみは、オレの中で黒く大きな渦を巻いて荒れ狂っている。
そんなに嫌いなら、出会わなければいい、話さなければいい、見なければいい。
それはそうなのだが、現実というやつはそう簡単には割り切れない。
あいつとは切ってもきれない縁があるのだ。
血のつながりという縁が。
たった二年早く生まれたくらいで、兄貴面するあいつが許せない。
高校の弁論大会では県代表、走り高跳ではインターハイに出場し、バレンタインデーにはチョコを入れるスポーツバッグを用意するだなんて。
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