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オレには見えていた。
ジュビリー号の口の中に、サルモドキの手が突っ込まれているのを。
鉤爪はしっかりと喉の奥に食い込んでいた。
ジュビリー号は食うのをあきらめ、なんとか吐き出そうとしている。
だが、サルモドキの手は、容赦なく喉の奥へ入り込んでいった。
苦痛にのたうち回るイヌの化け物。
腹を見せて、もう降参の姿勢だ。
でも、サルモドキは攻撃の手を止めない。
素早く口から手を引き抜いたかと思うと、ジュビリー号の腹にまたがり、喉元に食らいついた。
「ああ、やめろ! もう勝負ありだ!」
男は、イヌとサルに近づいていくが、どうにも手が出せずまわりをウロウロするばかり。
「おい、キミも止めてやってくれ! ジュビリー号は大会に出場するんだ。ここで死んでもらっちゃ困る。どれだけ金をかけたと思ってるんだ!」
サルモドキは、イヌの化け物の喉を引きちぎり、嬉しそうに肉片を飲みこんだ。
そして腹部へと噛みつき、切り開かれた腹の中へ首を突っ込んだ。
こんな化け物を、オレにどうやって止めろっていうんだ?
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