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「それにしても、この部屋暑いね。冷房とか無いの?」
梅田さんは、しきりにハンカチで汗を拭いている。
残念ながら、そんな気の利いた家電は、天井裏にネズミが棲むこのボロアパートにはない。
いや、そもそも初冬の季節に半袖姿で汗って、どれだけ暑がりなのか。
こたつの中に入っているオレは、寒くて震えているっていうのに。
オッサンは、サルモドキが見たくてしょうがないらしい。
風呂場から首根っこをつかんで持ってくると、「ガムテープだなんて残酷だ」と口角泡を飛ばす。
「残酷なのは、この化け物だろ。こうしておかなきゃ、そこらへんの生き物、全部食っちまうんだから」
「それはキミのしつけがなってないんだよ。ちゃんと食べていいもの、駄目なものを教えてあげなきゃ」
こんな化け物にしつけが通用するのか?
とりあえずサルモドキの両頬をつかみ、面と向かって言い聞かせてみる。
「オレの許可なく、食べんじゃねぇ。いいか。食べるな。絶対食べるな!」
梅田さんは、オレからサルモドキを奪い取り、ガムテープを剥がした。
子供をあやすように、優しく声をかけながら。
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