第4話 世界

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「食べたものの遺伝情報を取り込んで成長する。それがラバナスの基本生態だ。そこから話さなきゃ駄目なのかい?」 基本生態もなにも、まったくゼロから話してほしい。 このサルモドキは、イヌの化け物やフレンチブルドッグを食べて、その遺伝情報を取り込み、毛が生え四足歩行に変わったというのか。 にわかに信じられない。 サルモドキは、オッサンに抱かれるのを嫌がって、するりと腕の中から抜け出た。 そしてオレの背中にしがみつく。 鉤爪が痛い。 「僕のジュビリー号もキミのこの子も、生まれたときは人間の胎児みたいな同じ形をしている。その後何を食べさせるかによって、姿形も特性も変わっていくんだ。僕のジュビリー号は、最初に土佐闘犬を食べさせた。それから、マスティフやポインターを与え続けた。あの形に育て上げるまで、どれだけのお金がかかったことか」 梅田さんは熱く語る。 そしてオレの部屋の中を見回して、付け加えた。 「・・・そうだな。キミの年収よりは、多いと思うよ」 なんて失礼なオッサンだ。 だけど、間違いではない。 ジュビリーは、闘犬の遺伝情報を受け継いだ、化け物。 じゃあ、このサルモドキは、何を食ってきたんだ? サル? チンパンジー?
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