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オレがメガネをかけたら、そのまま信太郎ができあがる。
「その子は、キミをお兄さんと間違って認識しているんだよ、きっと」
やっぱりそうか。
どうりで、初対面のときから、なれなれしすぎると思っていたんだ。
「だから、その子を譲り受けたとしても、僕にはついてこないし、言うことも聞かない。それどころか、どんなに離れていても、キミのもとへ帰っていってしまうはずだ。一種の帰巣本能とでもいうのかな」
そうだ。
あいつは信濃川に沈めても、この部屋に帰ってきた。
「だから、キミも一緒にきてもらいたい」
そう言って、一枚の紙を差し出した。
『平成二十七年度 東北・甲信越 寒中水泳競技会 予選 参加者の皆様へ』
寒中水泳?
大きな見出しにつづいて、開催場所と日時が記されている。
村上市市民プール、十二月四日、朝八時受付だそうだ。
冗談きついぜ、オッサン。
「いやいや、オレ寒いの苦手だし、水泳なんかしたくないし」
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