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好恵の料理はやっぱり美味しい。
今夜のメニューはサバの味噌煮だった。
臭みがなく、とろっとろの味噌で、身の奥までしっかりと味がしみている。
こんなものを「今日はサバが安かったから」なんてササッと作られたら、たまったものじゃない。
コツは、霜降りと煮詰めるまえに冷ますことだという。
サバの味噌煮を、ご飯にバウンドさせて口へ運ぶ。
間髪入れずに、味噌のついたご飯をかき込む。
そんなオレの至高の瞬間を、彼女は嬉しそうに見つめていた。
「柿、食べるでしょ。今、皮剥いてあげる」
好恵はそう言って、エプロンの紐を結びなおしながらキッチンに立った。
「ごめんな、急に飯食わせてくれだなんて。次の給料日まで、ピンチでさ」
オレの突然の頼みに、彼女は快く夕飯を作ってくれた。
「何よ、別にいつだって言ってくれればご飯くらい作るわよ。明日はママのところで仕事だから、冷蔵庫に用意しておくわ。温めて食べてね」
オレはいつも、好恵に頼ってばかりだ。
本当はこんなに迷惑ばかりかけたくはない。
でも仕方がないんだ、来月の給料日までは。
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