第4話 世界

12/19
前へ
/325ページ
次へ
オレは寒中水泳競技会に参加することにした。 何も梅田さんの情熱にほだされたわけじゃない。 ヤツを罪悪感無く葬るには、他のラバナスに食われてもらうのが一番いいと思ったのだ。 もう、あの右足の感触を味わいたくはない。 グニュッ、ボキボキ。 思い出しただけで、悪寒が走る。 サルモドキには、毎日「勝手に食べるな」と言い聞かせていた。 それが効果てきめんで、近所の動物をとって食うことはなくなった。 エサを探しに家を出ることもなくなったので、ガムテープで縛りあげる必要もなくなった。 風呂場に閉じ込めてはおくけれど。 だが、同時に何も食べなくなって、みるみる痩せていくのがわかった。 このまま餓死してくれても問題はないのだが、梅田さんの手前、大会にはそれなりの体調管理が必要だろう。 大会に出たけど、腹が減って動けませんでは、梅田さんの面目が立たない。 せめて現状の体重を維持できるくらい、何かを食べさせてやらなければ。
/325ページ

最初のコメントを投稿しよう!

766人が本棚に入れています
本棚に追加