第4話 世界

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そこで、ドッグフードを与えてやることにした。 愛犬カイに与えていたドッグフードの、三ランク下、激安のドライのものを。 「これだけは、食べていいぞ」 そう言って与えてやると、ヤツはとにかく食った。 そりゃ、自分の身体よりデカい犬を平らげるくらいだから、消費量は、半端じゃない。 八キロの大袋をたった半日で食い尽くして、まだよこせとしがみついてくる。 現に、一日ひと袋でも、目に見えて痩せた。 今は一日、一・五袋で我慢してもらっているが、それでも食費は馬鹿にならない。 オレの薄給は、あっという間に底をついた。 梅田さんに事情を説明して、少しだけカンパしてもらってはいる。 けれど、オレの食事代までは頼めるはずもなく、居酒屋バイトのまかないと、好恵の手料理で給料日までのあと十三日間、なんとか生き延びなければならなかった。 『ラバナス(Ravenous)』それは英語で、『ガツガツ食う』とか『貪欲』って意味だそうだ。 スマホで調べた。 ヤツらの名前だ。 けっして、オレのことじゃない。
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