第4話 世界

15/19
前へ
/325ページ
次へ
好恵は無言でテーブルの空いた食器を下げると、キッチンで洗い始めた。 なんか微妙な沈黙がしばらくつづく。 水道の流れる音が止んで、やおら彼女がつぶやいた。 「・・・毎日見てたら、あきるかもよ」 オレは最後の柿を食べ終え、皿をキッチンに持っていく。 彼女の背後か腕を回して、一緒に皿を洗った。 「もし、あきたら・・・新しいエプロンを買えばいいさ」 そのまま彼女を抱き上げ、ベッドへ連れて行った。 互いに慌てるように服を脱ぎ、強く抱き合う。 オレは好恵の滑らかな肌に唇を添わせた。 首筋から肩、腕へ。 肘の内側に、ポツリと赤い吹き出物みたいなものが三つもあった。 それに気付いた彼女が微笑んだ。 「真冬なのに蚊に刺されるって、おかしいよね」 「それだけ、好恵の血が美味しいんだろ。オレも、味見」  腕に吸い付くオレを、彼女が笑ってたしなめる。 「こら、駄目だって。くすぐったい」  笑顔は、二人の快楽をいや増した。  ※ ※ ※ ※ ※
/325ページ

最初のコメントを投稿しよう!

769人が本棚に入れています
本棚に追加