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 ずっと燻らせていた想いは変わらずにある。  杏汰が願ってくれたネックレスに手を当て、ひまりはその願いを今一度噛みしめた。  伊月くんが好き。  伝えなくちゃいけないこともわかってて、その機会は毎日目の前を転がっているはずなのに、どうしても勇気が出ないままだ。  授業中、席替えをして窓側になったひまりの席からは冬の空が見える。  ぼんやりと眺めては、2度と会えない杏汰を思いだして浸ることもあった。それを繰り返しても変わらないのに、いなくなってしまった初恋の人は姿がなくても優しく見守っていてくれているような気がしてならなかった。  
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