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「俺も、これだけは大切な思い出だから外せないんだ」 「うん、私も」  買ってくれたミルクティーを飲み、ほうっと息をつく。  そういえば、冬が近づいた日の放課後、パーカを掛けてきた杏汰の息があまり白くならなかったなと、ひまりは思いだした。 「でも、思い出にしたくないこともあるかな」 「たとえば?」 「うーん……ひまりちゃんに告ったこととか?」 「あはは、思い出にしないでよ」 「それから、小早川がいたことも」  ブラックコーヒーを飲んで、曇った窓ガラスに人差し指で落書きをしている。 「七瀬くん」 「そろそろ、伊月って呼んでくれる?」 「……伊月くん」 「ハイ」  自分から言ったくせに照れくさそうにする伊月は、口元に手を当ててごまかしている。 「お誕生日おめでとう。今日、誘ってくれて嬉しかった」 「なんだ、知ってたの?」  少しだけ頬を染めた伊月は、落書きした今日の日付を横目で見て笑った。
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