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新年早々、七瀬家は異様に重苦しい空気に包まれている。
「伊月には、申し訳ないことをしたと思ってる。その分を取り戻せるとは思わないけれど、これから先の時間をずっと一緒に過ごして、家族でいたいと思っているんだ」
久々に帰ってきた伊月の父親は、リビングで向かい合って座り、落ち着いた様子で話し始めた。
「……勝手なことばっか言ってんじゃねーよ。ずっと一緒にいたいなんてさ、約束できないくせに言うなよ」
(どうせいなくなる。また1人になって寂しくなって、思い出に頼って……そんな毎日、懲り懲りなんだよ)
せっかく前に進み始めた気持ちを簡単に沈ませる父親が、伊月は大嫌いだった。
「忘れたいことだって、あるんだよ。俺がどんな思いで今日まで過ごしてきたと思う?佐野さんにどれだけ迷惑かけてるか分かってる?都合ばっかりで、気持ちを考えてくれない親なんて、一緒にいたいと思わないよ」
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