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はあ…
どんどん俺の平穏は無くなっていく。まず、私服の菅くんが一ミリも高校生に見えない。めっちゃ大人だし秋葉原で見た時よりもオシャレだし、なんなのこの人。
そして何よりもその手に握られるそれに俺は目をそらしたくなる。俺たちは高校生だ、なのに菅くんは法律を犯すらしい。
カチン、
手慣れた手つきで菅くんは煙草に火を付ける。これは昔父さんが吸ってたやつと同じニオイがする。
絶対に絶対に未成年で煙草を吸うのはダメだ。喉の奥でそんな言葉が止まる。
「わりい、煙草嫌いか?」
多分俺が不愉快な顔をして菅くんを眺めていたのかもしれない。自分でもそんな言葉にハッとして思わず口走る。
「あんまり好きじゃないかも」
「そっか、マジわりい」
そういうと菅くんは点けたばかりの火をすぐに消す。あの菅くんが俺のためにとか思うとなんか変な感じだ。だって学校中で名が通る程の最恐の不良が俺のために煙草の火を消したんだ。消したんだぞ、本来ありえない事なんだ。
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