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だから、僕は、彼を刺し殺した。まだ温かい血飛沫を浴び、僕は絶頂に達していた。同時に、おもちゃを壊してしまった時のような何とも言えない空虚感も感じていた。快感と絶望のコントラストが何とも鮮やかだった。
そうして、僕はこの家で一人きりになった。僕の他には、べっとりとした血の塊が部屋いっぱいに広がり、その中心に中川 アキラだった肉塊が一つあるばかりだ。
僕は命を勘定する。だから、今、この家には僕一人と死体が一つ。
『今、家へ向かっているから』
松元 サツキからのメールが中川 アキラの携帯電話に届き続けている。
僕は依然として一人ぼっちだったけれど、大丈夫そうだ。また一人、この家にやって来る。しばらくは二人だ。
僕はもう一度、武者震いをした。
今度は簡単に壊さないようにしなくっちゃ。死んでしまったら、人間は一つの肉塊に過ぎないのだから。
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