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無機質な携帯電話の着信音が響いたのは、そんな時だった。机上に放置されたそれを無造作にとると受信箱を開く。タイトルには見ず知らずの女性の名前があった。
「だれだ?」
僕は怪訝な表情をたたえると、メールを開いた。
『どうして返事をくれないの?』
一言、そう書いてある。何のことだろう。わけも分からないまま、たてつづけに二通目が届く。同じ女からだ。
『今、どこにいるの?』
更に三通目。
『会えないかしら』
『会いたい』
『お願い。声を聞かせて』
そんな内容のメールが間髪入れずに十数通は届いた。その度に電子音が室内に反響した。
ゾクリとした予感がして僕はぶるりと震えていた。
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