3507人が本棚に入れています
本棚に追加
「今週の日曜日……」
「あ、はい、なんですか?」
「蜜香のご両親とお姉さんに、結婚の挨拶に行きたいんだけど……いい?」
後ろから
聞こえてきたのは
いつもとは違う
彼のどことなく弱気な声。
「雅紀さんが迷惑でなければ……」
「バカ。いつも言ってるだろ?お前のことで迷惑だなんて思うことはないって。それに、お前の父親と約束したからな。」
「……約束?」
首を
傾げながら
後ろを振り返れば
思いのほか近い距離に
雅紀さんの顔があって
条件反射のように意識して色づく頬。
そんな私を見て
フッと小さく
笑みをこぼした彼は
私の唇へと
軽く触れるだけのキスを落とした。
「同棲の許可をもらいに行った時に、時期が来たら、また、挨拶に来ますってそう約束したんだ。」
プロポーズを受け
婚約指輪も受け取って……。
……そっか。
あの時は
まだまだ先の話しで
そこまで
深く考えていなかったけれど
当分先だと
思っていたその"時期"は
ゆっくりだけれど確実に
私のすぐ目の前まできていたんだ------。
「俺が挨拶に行った時点で、どれだけ後悔しようが引き返すことはできないし、どれだけ足掻こうと、俺は、お前のことを手放してやれなくなる。」
「……」
「……それでも俺は、お前の家族に"お前をください"って、挨拶に行ってもいいか?」
そう聞いてきた
彼の表情は真剣そのもので。
それは、まるで
私の意思と覚悟を
最終確認をするかのようだった。
.
最初のコメントを投稿しよう!