恋は時に甘く時にほろ苦く

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個室の 入り口を見ながら ニヤニヤと 不敵な笑みを浮かべる美耶。 部屋の中へと 入ってきたのは紛れもなく課長で。 「え、えっ?」 アルコールのせいか はたまた 唐突に 現れた課長のせいか 混乱して 正常な判断が出来ないでいた。 「ごめんね、蜜香。実は、こっそり課長のこと呼んでたの。」 「え、い、いつから課長いたの?」 「多分、蜜香が酔って課長のバカーって叫んでた辺りで気配を感じたから最初からいたことになるのかな。」 「……」 ……ってことは 今までの会話は全部 課長に聞かれてたってこと? 「……ちょっと、蜜香。逃げないんじゃなかったの?」 「だ、だって……」 課長と 視線を合わせないようにと 美耶の腕へとギュッとしがみついた。 ちゃんと話すって ついさっき覚悟を決めたのに やっぱり 本人を 目の前にすると どうしても怖いって 気持ちの方が増してしまう弱い自分。 「……やっぱり、無理っ!ごめんなさいっ!」 「あ、おいっ!」 「み、蜜香、急に立つと」 「あ、あれ……?」 * ……夢を見た。 ふわふわとして あたたかくて安心する香りがして。 課長が 壊れ物に触れるように 優しく 包み込むようにして 私のことを抱きしめてくれていて。 これは 夢なんだよね……。 夢なら どうか覚めないで ずっとこのままでいさせて---。 「……ん」 目を開けると 見慣れない天井が広がっていた。 .
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