サヨナラから始まる恋

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顔上げれば 階段を上がりきった 先にあるゴミ箱が目に入った。 「……っ」 好きだった。 彼が私と 同じ気持ちじゃなくても それでも 私は彼のことが好きだった……。 コツン、コツンと 静かな空間に ヒールの音を響かせながら 階段を登り終えゴミ箱の前に立った。 右手には 必要なくなったチョコレート。 「……それ、捨てる気?」 「っ!!」 不意に 背後から聞こえた声。 振り向けば そこには スーツを着た男性が 壁に寄りかかるようにして立っていた。 ……いつから そこにいたんだろう。 まさか 最初から 全部見られてたのかな……。 「……はい、捨てます。もう、いらなくなったので。」 彼に とっての私と同じで このチョコも もう……いらなくなったから。 「へぇ……。」 暗くて相手の 顔はよく見えないけれど 耳へと届く 低い低音ボイスに どこか聞き覚えがあった。 男性は 一段一段階段を登り 私へと一歩 また一歩と近づいてきて 近づくにつれて 顔がハッキリと見えて。 「……え?」 声の主が あまりにも意外な人物で 驚きのあまり 目を見開き固まってしまった。 「……じゃあ、俺がもらってやるよ。チョコもお前も。」 その人物は 私の前に立つなり ニヤリと口角をあげそう言った。 .
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