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失敗か、とそのまま走り抜けて距離を取ると、マージは剣を構え直して此方に駆けてきた。
俺は振るわれる鋒をなんとか躱しながら、短刀で斬り付ける事が出来る間合いに近付いて、腕を動かしていく。
まぁ、龍人の皮膚は硬いから、こんな歯引きされた短刀なんかじゃダメージを与えられないんだけどな。
なのでマージが短刀に気を取られている間に足元に蹴りを何発か入れてみる。
すると、やはり慣れない砂の足場で不安定になっていたのか、簡単に転ばせる事に成功した。
なので直ぐに馬乗りになって剣を持つ腕を足で押さえて、首筋に短剣を当てた。
はぁ、と溜め息を吐いてマージは、参りました、とロランに告げる。
「そこまで!勝者、リュクシア!」
ロランの声で俺はマージの上から退くと、手を掴んで引いてマージを立たせる。
と。
「まさか短剣相手に負けるとは、自分はまだまだだな」
なんて苦笑いのマージ。
そんな彼女に、でも油断してる相手でないとキツいんだよね、と苦笑いを返せば。
「なら次は負けない」
そう言われてしまった。
「俺も負けるつもりは無いよ」
ニヤリと笑って返しておく。
またリュッセルに訓練に付き合って貰わなくちゃな。
それから俺達は、向かい合って再び礼をして、円から出た。
「ちゃんと戦闘になってて良かったぞ」
ロランにお褒めの言葉を貰って、マージは少し嬉しそうにラズの隣に戻っていった。
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