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『何でメールを出してくれなかったの』
A子の声がはっきりと耳に届いた。
「ひいっ!」
私は思わず受話器も、手にしたビニール袋も放り出してその場を駆け出した。
すると、いきなり街灯の明かりが次々に消えていく。
訳も分からずに、私は半泣きで家に逃げ帰った。
全力疾走をしたのはいつ頃だったか?
運動不足が祟って呼吸が整わない。
私は荒い息のまま部屋に駆け込んだ。
「何なのよ全く」
悪態をついてベットに寝転ぶ。
六畳の部屋には勉強机とベット、後は本棚だけだ。
落ちているスマホは嫌でも目が付く。
明滅する光はメールを知らせるものだった。
さっきの事で失念していた、携帯電話の話がゆっくりと頭に浸透していく。
私は冷や汗で急激に体温が下がっていくのを肌で感じた。
生唾を飲み込んでから、ゆっくりとベットから身体を起こす。
震える手を無理やり突き出した。
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