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携帯を壁に叩きつけようとした瞬間、着信音が鳴り響いた。
メールではない。
電話の着信音である。
いきなりの音に、私はびっくりして投げつけようとした姿勢で固まってしまった。
鳴り続ける携帯をゆっくりと目の前に戻すと、着信音名にはA子の名前が表示されている。
鳴り響く着信音。
どれだけの時間が経ったのだろう。
私は生唾を呑み込むと、震える指先で受話器のマークをタップした。
『どうして私を無視するの? 酷いよね? 酷いよね? あなたのせいで、私は○○ちゃんに追われる事になったのに?』
○○ちゃんの名前が頭に入ってこないが、中学の同級生の名前だと言うことは分かる。
『あなたがメールを出してくれなかったから、私は私は私は私は私はワダシハわたしいはわたしは……』
永遠と続く声に私は平謝りをした。
とにかく、言い訳をしないではいられない。
「ごめんA子! 私はメールはちゃんとB子に送ったの! 送ったのよ! ただ、B子の古いアドレスに送ってしまったの! 悪気はなかったのよ!」
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