無邪気

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 僕のケータイが、可愛い声でメールが届いたよと告げる。  ああ、拾い上げるのも億劫だな。最近、ほとんど何も口にしてないし。 「久しぶり、愛してるよ。」  うん。久しぶりだね、僕もだよ。  君になら何でもして上げられる。あ、でも今は無職だから物はダメだな。 「じゃあ、貴方の声が欲しいな。いつでも聞いていたいもの。」  ふふっ。変だね、君とはメールだけなのに。でもきっと、君の声も素敵なんだろうな。 「うふふ、ありがと。嬉しいな。」 「貴方の眼は綺麗なんだろうな。きっと宝石みたいに輝いてさ。」  そうかな。じゃあ、片目を上げるよ。もう一つは君からのメールを読むのに必要だから。 「ねえ、愛してる。」  僕も。 「貴方の気持ち全部が欲しいな。」  気持ち? 心って事? 頭がふらついて難しく考えられないや。 「もう。こういう時は、上げるって言うだけで良いの。」  うん。上げるよ。メール越しだけど、君に、全部。 君だけが僕の大切な人。家族も、職場の奴らも、僕の事なんか……。 「うん。ありがと」  ……もう返信は来ない。  心って、心臓に有るんだっけ? 脳味噌?  ああ、血が止まらない。考えも、まとまらない。  ねえ? 約束破っちゃうけど、今度…は、僕…から……メールし……て……。
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